30代の女性カフェ店員のアルバイトが年齢を理由に解雇されたという件についての裁判が近頃あり、この女性は敗訴したということで、注目が集まっているようです。詳しくは「「鮮度が落ちる」と雇い止めされた「カフェ女性店員」 不当と提訴するも認められず|弁護士ドットコムニュース」のページに載っていますが、お店の主張によると、このお店自体は常に若い店員を確保したいから、ある程度の年齢になった人は辞めてもらうという措置をとってきたみたいで、今回の女性もそのケースみたいです。
>全国展開する喫茶店チェーン「カフェ・ベローチェ」の千葉県の店舗で4年11カ月の間、アルバイトとして働いてきた30代の女性が「雇い止め」を受けたのは不当だとして、店舗の運営会社に雇い止めの撤回と慰謝料を求めていた裁判で、東京地裁は7月31日、請求を棄却する判決を下した。
判決後、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで開かれた記者会見で、女性は「若くないからもういらない、という発言はひどいと(裁判所が)言ってくれると思っていた。今回の判決で、アルバイトは何の権利もなくて、人間としても保護する意味がないんだということを突きつけられた」と涙ながらに語った。
そもそもアルバイトはクビなりやすいと言われるが、それはアルバイトと正社員では解雇要件は違うのだろうか?気になって調べてみようとしたが、それっぽいページが出てこない。整理解雇などの必要性が出た場合には、優先的にバイトがクビになるというのはあるのだが、バイトをクビにしたいときに正社員と同等の要件が必要なのか?そうじゃないのか?もっと条件は緩いのか?についてちょっと見つからないのだが、仮に正社員と同等の要件が必要ならば、年齢を理由にする解雇は認められないでしょう。ということは、裁判所が今回の解雇を認めたということは、アルバイトは正社員と同等の解雇要件は必要ないということなのか。年齢を理由にクビにしても良いということになる。そうなれば、この女性の言う通り、アルバイトには人間としてまともに保護されているとは言えないでしょうね。
高齢になるとバイトが見つからなくなるなんて話をよく聞くが、それはこういう理由なんでしょうかね?アルバイトは経験があった方がいいが、その経験は若い人でも十分積める。正社員みたいに勤続20年とか、30年の人みたいなそういう人との如実な差が生まれる働き方ではない。1年くらい過ごせば、十分経験豊富と言えるような状態になる。そうであれば、お店としては高齢の人をあえて雇い続ける意味はないとなるのかもしれない。正社員の場合は、長い経験はそれだけ生きやすいというのもあるし、そもそも高齢だからといってクビにはできないという事情があるが、バイトの場合は、10年、20年勤めたとしても、それだけ比例的に経験が蓄積されるとは言いがたいので、どっちかというと若い人に働いて欲しいというのならば、クビにされやすくなる。実際にクビにできるという事情があるのではないか?と思うのです。つまり、新卒、既卒差別みたいに、年齢を理由に差別をしても構わない。年齢を理由に職を奪っても構わないということになるのでしょうね。
そうなれば、彼らの生活は成り立ちません。バイト自体がそもそも安定していないというのは、こういった理由があるからだと思うのだけど、本当にこの国はどうすれば良いんでしょうね?セーフティネットがあれば、クビになっても生活困らないから良いや。となるから良いのかもしれないが、セーフティネットは万全じゃない。というか、私はバイト、正社員関係なく、年齢とか、好き嫌いとか、仕事ができないとか、従来なら正社員の不当解雇にあたるような要件で解雇はして良いと思っています。それは本来生活の保障は国がやるべきなのです。セーフティネットを整備して、国民の健やかな安心の生活を保障するのは本当は国がやるべき。でも、現状はどうなっているか?というと、民間企業にやらされているわけですよ。正社員を簡単に解雇できないとかいうことも、その理由としては、彼らの生活が脅かされるからでしょう?つまり、彼らの安心の生活を民間企業に保証させようとしている。安心できる生活の整備が完全に民間企業に任されてしまっているのです。だから、仕事できないくらいじゃクビにできない。1度採用したら、お荷物でもクビにできない。これは迷惑でしょう。
>代理人の笹山尚人弁護士は「極めて不当な、多数の誤りを含む判決だ」と厳しく批判し、「控訴して、戦っていきたい」と話した。
女性は「裁判所は、正しいことを企業に対して言ってくれると思っていたが、そうではないと分かって、すごく落胆している。『鮮度が落ちた』という言葉には、納得いかない。言ったことは認めているのに、それが悪いと認めないのはおかしいと思っているので、できるだけのことをやりたい」と語った。
今回の女性の場合は、クビにしたカフェが酷いと全く思わないこともないが、私はカフェの都合もあるから、それは必ずしも否定できない。この女性は確かにクビになったら困ります。ただ、この女性を雇い続けることでお店が困るということもありえる。すなれば、どっちにしろ誰かは困るんです。そういう状況が何故起きているか?というと、国がセーフティネットをカフェに丸投げしているからでしょう。今回の場合は、裁判所がそれすら否定しているわけだけどね。つまり、国はセーフティネットを万全にはしない。雇うお店側にもセーフティネット同然の雇用の仕方は求めない。つまり、この女性にはセーフティネットはないと断言したも同然なんです。仮に今回の解雇を不当解雇とした場合には、お店側にセーフティネットの整備を丸投げしている状態なので、どっちにしろおかしいとは思うが。
通常は国はセーフティネットを整備しないから、民間企業の解雇規制を厳しくして、労働者を守ろうとする。これが民間企業に丸投げしている状態です。ただ、今回のケースは、同じく国はセーフティネットは整備しない。でも、民間企業も勝手にクビにして良いよ。ということですから、民間企業にもセーフティネットを求めていない。この女性を守ってくれるものはもう存在しないということですね。今回の裁判を見ると、私は首にしたカフェが悪いというよりは、国がセーフティネットを準備すればそれで済んだ話だろうと思う。仕事を失った人が生活保護を無条件で受給できるような状態にしておけば、クビになることで精神的ショックはあるにしても、生活に困る状況は生まれづらい。この女性もそこに怒るべきじゃないか?と思う。カフェも正直被害者だと思う。何でお店が従業員の安定した生活を最大限保障しないといけないのか?それは国がやることだろう。国を訴えても生存権の争いについては、裁判所が以下で紹介している「朝日訴訟」にて、プログラム規定説をすでに提示し、国に国民を救う強制的な義務は存在しないと示してしまったので、争ってもムダでしょうけどね。生存権は、法的権利じゃないと。生存権を主張しても、国に救う義務は無いのです。あるのは道義的義務(努力義務)ですから、救わなくても、救えなくても良いという解釈が裁判所によってなされています。この女性は裁判所に憤っているようですが、私も生存権の判決を見るととても納得いかないですけどね。生存権は憲法に書いてあるだけで、国民を救うための権利ではないのです。

朝日訴訟から生存権裁判へ
- 作者: 井上英夫,寺久保光良,他,生存権裁判を支援する全国連絡会
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