「サービス残業」は列記とした違法行為なのだが、何故かまかり通ってしまう不思議な部分がある。これは赤信号みんなで渡れば怖くない。それと一緒で、平気でやっている企業が多いから、心理的なハードルが非常に低い犯罪をしているという認識はあるものの、その問題点を深く考えないで済むという面があるために、どんどん広がっていってしまうのでしょう。これがサービス残業がなくならない理由の1つなのだが、もう1個大きな理由があると思います。それはサービス残業をしないと、会社がもたないという部分です。これはどういうことか?というと、要はサービス残業は会社の経営におけるルール違反なのですが、現状取締りは緩く、見過ごされているケースが多い。つまりルール違反をしている企業がのさばりやすい傾向にあり、そういう企業が溢れている中では、サービス残業をさせないで経営していくのは、自ら会社を潰すようなものなのです。
これはどういうことか?というと、100mの競争で、みんな当たり前のようにフライングをする。しかし、そのフライングというルール違反を誰も止めない。8人中、7人がフライングをし、自分だけが真面目にルールを守り、フライングをせずにスタートを切ったとしよう。しかし、スタートを切った時点で、自分以外の7人は遥か向こうにいる状態で、とてもじゃないが勝ち目がない。ルールを守るがゆえに勝ち目がないのであれば、自分もルールを破ってフライングをするしかない。そういう状態が現実でも起きていると思います。つまり、かなり真面目な経営者だったとしても、ちゃんと法律を守って、経営なんかしていたら、法律を平気で破って経営をしている企業に勝てないのです。だから、本心ではごく普通に経営していきたいのに、それじゃ自分の会社が廃れていくのを黙ってみているだけだ!とうことで、やむなくサービス残業等、違法な労働を強いているケースもあると思います。
つまり、このケースでは会社の経営者はあまり責められない。この経営者をこういう心情に追いやったのは先に違法な経営をしてきた老舗の企業とそれを見過ごしてきた国の責任が大きいから。真面目に経営すれば、自分たちが苦しむと分かっているのならば、「社員だってサービス残業構わないですよ」と言うかもしれないし、そっちの方が職を失うくらいならマシと考えている人もいるかもしれない。この状態を断ち切るには、方法は1つしかないと思う。それは全ての企業が一斉にサービス残業をやめるということ。それしかないと思う。一部が止めるとうのは、多分無理だと思います。それは一部しかやめないと、その企業は、サービス残業を依然として続けている同業他社に負けてしまうから。サービス残業の有無で必ずしも利益の大小が決まるとは限りらないけど、相対的に不利であることは間違いないでしょう。
だから、その相対的不利を完全になくしてやるしかない。それは全ての企業がサービス残業をやめる。これしかないと思うのです。ただ、こんな方法はあまりにも非現実的でしょう。サービス残業をどうやって一斉になくすことができるのか?その具体的な方途がないのです。自分でこんなことを言っていて申し訳ないけど。それは赤信号を渡る人が今後いなくなるか?ということを同義だと思うのだけど、そりゃいなくならないでしょうね。赤信号を平気で渡る人の数は知らないが、1日あたり相当な数じゃないか?と思います。とても数えられない人が多分信号無視をしていると思う。そりゃ警察官とか、見つかっちゃマズイ人に見られる可能性があまりに低いからです。現実的にはなくせない。すると、サービス残業をしている企業をなくすというのも無理でしょう。というか、仮に現実的にその数が減ったとしても、サービス残業をさせる企業が減れば減るだけ、自社がサービス残業を続ければ、他社を出し抜いて利益を伸ばせるチャンスが増えるってことです。8人中7人がフライングをするよりも、2人しかフライングをしなければ、自分が優勝できる可能性は高まるじゃないですか?
そうなると、当然同じことはサービス残業の例でも言えて、せっかく減ってきたー。と思っても、待ってました!とばかりにサービス残業を始める企業が出てくるかもしれないし、依然としてサービス残業をやめない企業もたくさんあると思う。もぐら叩きみたいな感じで、減ったと思ったらまた増えてくるという繰り返しに終始しそうな気がします。サービス残業をする企業が減れば減るだけ、サービス残業をさせるだけの旨味が増えてしまうのです。だから、多少は減るかもしれないが、そういう強かな経営者が多いと、0には絶対にならないですね。実際、正社員の座を失ったら人生終わりみたいな風潮あるし、セーフティネットも不完全で仕事を失ったら、どこまで転げ落ちるか?は分からない。そういう状況では、一労働者としては会社を潰す覚悟で、サービス残業を告発したりすることはやはり難しいです。そこを企業側も当然考えてのことでしょうけど。だから、この国の体質として、ある意味1つの文化として、サービス残業は後世に受け継がれていくのではないか?と思いますね。

そのサービス残業は違反です!
- 作者: 佐藤広一
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2006/03/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 38回
- この商品を含むブログ (1件) を見る