最近、高齢者の逆走問題がいろいろと話題になっていますね。これも認知症によるものだとされており、高齢になればなるほど、そのリスクは高くなり、その逆走によって誰かが巻き込まれてしまう恐れもあります。認知症というのは、現代の人間であれば、誰もがそのリスクと向き合わないといけないものだと思うのですが、平均寿命が伸びてきたことにより、従来なら死んでいた年齢でも生きている人が増えてきました。それが良いことのようには思えるのだけど、全部が良いことではないんですよね。残念ながら。認知症による車の逆走の問題についても、昔ならほとんどありえなかったことでしょうからね。それによって、人が亡くなる事故が起きた際には、本当にやりきれないですよ。平均寿命が伸びたことによって、人がそれだけ生きられるのは良いことかもしれないが、代わりに平均寿命生きられた人がその前に死ぬなんてことが起きたら、これって良いことなの?と首を傾げたくなるような事態です。
寿命が伸びたことで、本来死んでいた人が生きられるようになった。と先ほど言いましたが、それは介護の現場とかでも特に言われていることだと思います。要は身体の状態や容態が芳しくなくても生きられる人が増えたことを意味していると思います。それは自分1人では生きられないけど、誰かの手助けがあれば、なんとか生きていくことができる。老老介護なんて言葉が出始めたのも最近のことですよね。高齢者を介護するのが同じく高齢者という光景も珍しくない時代になり、従来なら死んでいた状況でも、なんとか生き延びることができるようになったからこそ、老老介護って起きていると思うのです。本当ならば、家族以外で専門的に介護をしてくれる人間がちゃんといるならば問題ないのだろうけど、現状介護職員の待遇は芳しくなく、それが今後良くなる気配もないし、介護人材の不足は今後も改善の兆しを見せない。つまり、老老介護は今後も続いていくだろうということですね。
その他にも寿命が伸びることによって、医療費などは増えていく。そのしわ寄せは若い世代にどんどん行く。抜本的な解決は見えないまま、世の中がどんどん進んでいく。少子高齢化という問題は日本で特に叫ばれているように思えますけど、別に日本だけの問題ではないのです。先進国はほとんどどこも抱えている問題であり、そのスピードが日本の場合はずば抜けて早いということであって。つまり、こうした問題は多かれ少なかれどこの国も抱えており、かつ解決の糸口はちょっと見えないんじゃないか?ということなんです。そうなると、今後も医療の進歩によって、世界中で平均寿命は伸びていくと思うのだけど、そういった問題がより強く前面に出てきてしまうのではないか?と思います。平均寿命の伸びを止めることは倫理的というか、国民の総意からいってできないでしょう。人が長く生きることによって、明らかな問題は出てきているのだけど、それを止める勇気も術もない。
かつて医療マンガのブラックジャックでは、あるセリフがブラックジャックこと間黒男から出ました。
「神さまとやら!あなたは残酷だぞ!医者は人間の病気をなおして命を助ける!その結果世界中に人間が爆発的に増え、食料危機がきて何億人も飢えて死んで行く…そいつがあなたのおぼしめしなら…医者はなんのためにあるんだ!!!」
これは作中のある地域で起きた「身体がちぢむ」病が流行し、ブラックジャックが師と仰ぐ先生に発症します。先生の身体は日に日にどんどん縮んでいき、亡くなる直前には生まれたばかりの赤ちゃん以下の大きさになり、人形が話しているようでした。そして、その先生は亡くなる直前に言います。
「限られたこの地球で、命のすべてが生きていくためには、体を縮めなくてはダメだという神の警告、思召しかもしれん」
この2人のセリフを通じて分かることは、人を助けて、命をいきながらえらせることは、別の新たな命を危機に晒している。この矛盾について、医者は何のために病気を治すんだ?人のためじゃないのか?人のために医者は医療を行うのに、それによって別の誰かが死ぬのか?一体、医者って何のために・・・。これがブラックジャックの本音ではないでしょうか?この矛盾は多分、現実世界にも似たような事象として存在しているものだと思います。冒頭で話した高齢者による車の逆走事件も何十年とか前ならば、なかったわけではないにせよニュースで報道されることもほとんどなかった。つまり、起きていたにせよ、頻発ほどの発生率ではないのでしょう。人が長く生きることは、本来なら死んでいたくらいの病気でも、かろうじて生きていける事態を生んだ。それはそれで素晴らしいことの反面、かろうじて生きていける人たちが、本人が望んでいるわけでもなく、別の誰かの命を危機に晒している。この矛盾を同考え、どう解決していくべきなのでしょうか?

ブラック・ジャック (1) (少年チャンピオン・コミックス)
- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 1974/05
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 69回
- この商品を含むブログ (48件) を見る