以前話題になっていた日本テレビの内定を手にしていた笹崎里菜さんの裁判で、どうやら入社が決まりそうだというニュースが飛び込んできました。この話題が最初にのぼったのは、1ヶ月くらい前でしょうか?学生時代にホステスのアルバイトをしていたことが判明し、それが「アナウンサーにとって重要な清廉性に欠ける」という理由で内定取り消しがされていました。これは世間でもかなり話題になり、どちらかというと笹崎さんと擁護する声の方が多かったと思います。私自身の意見はどうか?というと、清廉性の部分は知らないけど、内定取り消しの理由としては不適切だろうと思います。というのは、詳しい話は分からないものの、ニュースで知った限りでは、採用の選考が行われている段階では、ある種、ホステスや水商売のアルバイトについての質問はなかったということです。清廉性をそんなに気にしているのなら、面接のときに聞くべきだったはず。
それをしないで、採用内定を出した後にたまたま発覚したから、それで取り消しというのはちょっとありえないだろうと。身勝手すぎる。清廉性を失わせる要素なんていくらでもあるんだろうけど、そこまで日本テレビが気にするならば、採用選考の時点で、日テレ側が考える清廉性w失わせるような要素を抱えた人は全て排除できるように、何らかの策をとるべきだと思うのだけど、おそらく特別そういった策はとられていなかったのでしょう。アルバイトくらいのことを見逃すようでは、ほとんど何の策も講じていなかったと思う。そういった感じで、日テレ側には不本意な採用になってしまったのかもしれないけど、それは自社のミスであり、それを内定者に転嫁するような形で解決を図るのはあまりにも酷いな言わざるを得ない。
採用の段階でミスをしたのは分かるが、結局、日テレの評判を落としただけじゃなくて、笹崎さんの名誉にもかかわる事態にもなってしまったのです。日テレが自社の評判を落とすのは自業自得だとしても、彼女の経歴がバレてしまった。アルバイト自体は隠しておきたかったことなのか?は分からないけど、水商売自体に偏見を持っている人もいるでしょう。それは世間だけではなくて、日テレの局内にもいるはず。そうなると、すでに予測されていたけど、彼女は内定取り消しが取り消されても、ちゃんと日テレで働けるのか?ということが懸念されます。それは番組にちゃんと起用されるのか?といったことも含めて、彼女が清清しい気持ちで勤務できるか?ということも含んでいます。彼女自身に落ち度はなかったとしても、ここまで騒動になると、そういうアナウンサーを起用する側としても、躊躇することがあるのではないか?そういった影響が間違いなくあると思います。
端的にいってしまうと、彼女が本来得るはずだった、アナウンサー人生を日本テレビはぶち壊したということです。法律の話になると、内定取り消しが認められるケースというのは、採用当時知ることができなかった、または知ることができないと予想された事実で、それを理由に内定取り消しをしても、社会通念上相当と認められるものでないといけません。また、その理由は抽象的であってはいけない。「社風に合わないのではないか?」とか、そういった理由で、選考をしている段階では合否を決めることは可能だが、採用内定を提示した後は、そういった理由での内定取り消しは許されない。今回のケースでいうと、「清廉性がない」というのは、抽象的といえるのか?どうかが問題だけど、清廉性という言葉自体がそもそも曖昧で、抽象的といえると思うし、今回の理由は認められないと客観的に評価するのが妥当だと思う。また、先に話した「採用当時に知ることができない、または知ることが期待できない事実」ということについても、質問をすれば良かっただけであり、それをしたのに彼女が嘘をついたとかであれば、さすがに内定取り消しを受けてもしょうがないとは思うけど、その質問すらしていないのならば、当てはまらないだろうと思う。
こうして見てみると、客観的にちゃんと法律の知識さえあれば、容易に内定取り消しを通告するのが無謀であるという状況が発生していながら、それをしたのは、何か目的があるのか?単に法律に疎かっただけなのか?は分からないけど、結果としてこのまま彼女の入社が決まれば、何のための内定取り消しだったのか?と疑問をぶつけたくなるような惨状しか残らない。日テレは自社の評判を落とし、笹崎さんは自身が傷ついただけ(また、入社後に何らかの影響もあるかもしれない)です。法律の知識があれば、この状況はミスを認めて、入社をそのまま許容するというのが普通の人間だと思うんですけどね。法律もろくに知らないで働く労働者、経営者ってのはいっぱいいると思うけど、彼らも本当に勉強した方が良いと思います。そうすれば避けられたトラブルって物凄い多いと思います。内定取り消しを通告すること自体は法的には問題ないとしても、結果的に何の罪もない1人の人生を大きく左右したのは間違いないでしょう。今回の状況を客観的に分析すると、先ほど自社のミスを転嫁しただけと言ったけど、まさにその通りだと思うし、内定取り消しなんかをよく通告できるなと、日テレの神経を疑うレベルです。
かなりの確率で日テレの要求は通らない。そして、そうなった場合、残るのは彼女への今後の仕事や心の影響のみ。ただ、彼女を傷つけるだけに終始しそうなことが容易に想像できそうな中で、内定取り消しに踏み切り、結果的に起こったのは、予想通りの結末でした。日テレの思慮の浅さに呆れるばかりです。今回の裁判で笹崎さんを弁護した弁護士は「ただ、内定取り消しを撤回するだけでは済まない。日テレはひな鳥の毛をむしった」と説明しており、仮に彼女の入社が決定しても、彼女が心から喜んで勤務できる状況ではない、そのことの重大さを噛み締めてのことでしょう。日テレには何らかの形で彼女の心の傷を癒し、業務に支障が出ない体制を作っていく義務があると思います。日テレがやったのは、それだけの重大なことだったということです。こんなことをしでかす企業が今後現れないことを祈っています。

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