今シーズンオフに広島東洋カープのマエケンこと前田健太投手が海の向こう、メジャーリーグへ移籍するか?どうか噂されています。本人は移籍する気満々のようですけど、球団側が許可を出さないと移籍できないポスティングシステムを利用するため、どれだけのメジャー球団が入札に参加するか?そして、入札金は上限の20億円に達するか?が注目されています。実は広島はこの20億円に達しない場合にはポスティングでの移籍を認めないという報道も出ており、今シーズンオフにまた1人の日本人メジャーリーガーが誕生するか?非常に注目です。ただ、このポスティングシステムというのは、個人的には何故こんなものが存在するのか?理解が出来ません。FA権取得まで待てば、球団の意向とは関係なく独自にメジャーに移籍が可能ですが、FA権を取得するまでに移籍したいのであれば、球団が許可を出さないと不可能なポスティングシステムを利用するしかない。というのが現状です。
ちょっと話は逸れますけど、以前、プロ野球のドラフト制度が所属球団を自由に選べないことが「職業選択の自由」の反するのではないか?と裁判まで行われたようですが、結果は職業選択の自由を侵すものではない。と結論づけられました。これはNPBという1つの会社の中に、巨人とか、阪神とか、広島とか、そういう部署があるに等しい。とする見方でしょう。要はあくまでもドラフトにかかる選手はNPBに入社して、その中で個別の球団(部署)に分かれて、プレー(仕事)をする。という見方は別に不自然じゃないと思うのです。ただ、そうなるとNPBの中の部署の移動(他球団への移籍)はFA制度の利用など、NPBが決めたルールに則らないといけないのは分かるが、MLBへの移籍が何故FAでの移籍か?ポスティングでの移籍に限られてしまうのか?そこがよく理解できないのです。
NPBが1つの会社なら、MLBもまた1つの会社になるでしょう。会社の中の部署は自由に移動できないのは分かるけど、別の会社に転職するといった行為は、自由にできないとおかしいじゃないですか?サラリーマンは自由にやっていますよね。別に今働いている会社が転職することに同意しないと、他の会社へ移れないなんてことはありません。今のプロ野球選手のメジャーリーグへの転職事情は、FA権を取得する(年齢制限を設ける)、ポスティングを利用する(球団の許可が必要)のどちらかしか事実上ありません。本来はそれ以外にもあるのかもしれない。例えば、近鉄からドジャースに移籍した野茂英雄氏は、近鉄と喧嘩別れして「任意引退選手」としてメジャーに移籍した経緯があります。要は1度引退すれば、近鉄の選手じゃなくなるので、後は国内外問わず欲しい球団があれば、現役復帰という形で自由にそこと交渉ができる。というものでしょう。
この形って、サラリーマンが転職するときに特に似ている形だと思います。要は今いる会社に辞表を出して辞めて、改めて自分を欲しいと言ってくれる会社の採用面接を受ける。野茂氏の行ったやり方が、メジャーリーグへ移籍するときの1番自然な方法だと思うのです。今の制度としてFAかポスティングかしか事実上認められないのは、球団の主力選手を失うことに対する球団の配慮かと思いますけど、そうなると、各球団を1企業として認めているということになってしまいますよね。つまり、先ほどNPB自体が1つの企業で、各球団は部署に過ぎない。だからこそ、ドラフト制度は職業選択の自由を犯さない。そう判断できるということを言いましたが、各球団の事情にここまで配慮する必要は、球団を部署として捉えているのなら起こり得ないと思うのです。それは普通の会社なら、社内に何個も事業分野ごとなどに部署があって、それら全部が上手くいくことはまずない。赤字のところもあれば、黒字のところもある。それぞれで財政状況は異なるけれども、会社全体として黒字なら特に問題はありません。特定の部署がよほど壊滅的な状況じゃない限り、その部署にてこ入れとかはしないでしょう。
今回の例でいうと、主力選手が1人消えることは確かに痛いけど、壊滅的な打撃を与えるほどじゃない。それについて、ポスティングシステムにより、入札金を球団に付与するなどの措置をとるということは、球団を部署じゃなくて、企業そのものとNPBもMLBも捉えている。そう見るのが自然な気がします。広島という部署が前田健太投手を失っても、広島という部署が破壊されるわけじゃないし、当然それを取り締まるNPBにそこまで大きな影響はない。それがまるで影響があるような配慮を広島という部署に施すなら、それはもはや部署ではない。企業だと。ドラフト制度を是とするなら、ポスティングシステムは非になり、ポスティングシステムを是とするなら、ドラフト制度が非になる。各球団をただのNPB内の部署と見なすのか?独立した1企業と見なすのか?ドラフト制度とポスティングシステムを並べると、凄い矛盾が出てくる。どちらか一方に寄ることはできないのです。
ポスティングシステムについては、深く考えるといろいろな問題点があると思います。以前は野茂氏のようなやり方も一応あったが、今ではNPBとMLBが協定を結んでいるので、それを越えたやり方は認められないのかもしれない。移籍する側のMLBが独自に移籍ルートを限定しているのならば、それに従うというのがルールだろうし、やむを得ない部分もあると思う。ただ、日本とアメリカ双方のサラリーマンの転職の仕方と大きく異なる。転職の仕方が大きく制限されているのは多分間違いないと思います。この場合の転職はメジャーリーガーになる場合だけですけど。逆に普通の企業でもこういうポスティングシステムのような制度を設けないのは何故なんだろう?普通の企業だって、使える社員は他社流出させたくないですよね。考えられる理由としては、特定の企業だけ社員の転職を制限するような制度を設けると、そこに人が来ないから。ではないでしょうか?そんな危ない企業には誰も近づかなくなってしまう。誰も入社しようとしなくなってっしまうから。プロ野球の場合は、そもそも現実的にメジャーに移籍を考えられるような選手は一握りだし、プロ野球選手という職業自体が、そういう制限と伴ったとしても、なれるなら是非なりたい夢のような職業だということがあると思います。
先ほど言ったように、野茂氏のように引退をして移籍したり、自ら球団に自由契約を申し出てフリーになり、改めてメジャー球団と交渉をするという方法も一応あるのかもしれない。ただ、それをやる選手がほぼいないのは、他にやっている選手がいないからくらいの理由だと思います。誰もやっていないのに、自分だけがやると、「あいつはワガママだ」とか、「他の選手が我慢しているのに、あいつだけ我慢が足りない」とか、結局は出る杭は打たれてしまう。プロ野球ファンから理不尽なバッシングを受けかねない。だからこそ、余計な行動派起こさないで、一応ルールに則った移籍をするしかない。と諦めている選手もいるかもしれません。ただ、そういう移籍ルートをとらない選手が仮にどんどん増えてきたとしたら、それだけポスティングという制度の問題点にいい加減選手が気付き始めたということでしょう。そういう事態が起きれば、NPBとMLBも態度を変える可能性はあります。昔の野茂氏みたいな猛者が現れてくれないかな?と思いますけど、今は現実的にそういうやり方が無理なんでしょうね。本来は野茂氏のやり方みたいなのが妥当な気はしますけど。
今は日本とアメリカでは、主に2つの制度での移籍しかほとんどされていません。ただ、最近だとキューバの選手が亡命してメジャーリーグに移籍するという光景もよく見られます。メジャーリーグもキューバのスター選手を欲しがっているのですが、キューバ国家がアメリカへの移籍を認めていないため、キューバ人選手がMLBでプレーするには、もう亡命しかないのです。そういう法外な移籍もMLBは認めているのに、どうして日本とはポスティングのような、日本の球団には配慮するけど、選手にはほとんど配慮していない制度を設けたのでしょうね?世界最大の資本主義国家であり、自由の国アメリカなのに(笑)そこら辺がよく分からない。しかし、日本には同業他社に転職する場合には、一定期間それができない就業規則を設けている企業もあり、それを判例も認めているみたいです。でも、この場合の同業他社は海外ですよね。また、一定期間を過ぎれば、じゃあ自由に移籍を認めるべきだろう。ともなりそうです。
ポスティングシステム自体はNPBとMLBの行き来を制限するシステムとして存在するので、メジャーに行きたければ、それらの制度の中で実現するしかないのはその通りです。ただ、すでにしつこいくらい述べてきた通り、ドラフト制度も併せて、ポスティングしシステムの抱える矛盾点や選手の自由な転職を制限する、このやり方自体が私は凄い疑問です。球団には配慮しているし、メリットもそれなりにあるけど、選手にとってはデメリットしかない制度ですからね。将来的には、おそらくこの制度はまた変容していくと思われます。そして、大谷翔平選手がプロ入り前に賑わせたように、日本のプロ野球を経ないで、直接メジャーリーグに挑戦する選手も増えていくのではないでしょうか?

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