この国の履歴書やエントリーシートの手書き信仰はまだまだ根強いです。こういったものを手紙などと同一視している企業の人間が多いのかもしれません。だからこそ、「誠意が篭っている」とか、「熱意が感じられる」とか、平気で言ってくるのでしょう。実際、手紙は気持ちを伝えるものだから、手書きで書いた方が気持ちもより伝わりそうなのは理解できますけど、就職活動においては、履歴書やエントリーシートに書く内容は、ほとんどが情報であり、気持ちの面に関するものは「志望動機」とか一部に限られるでしょう。ですから、わざわざ情報を伝えるために手書きをするというのは、他企業に送るメールをわざわざ手紙にして送るようなものなのです。タイムラグもあれば、手間も余計にかかるそんなことをしている企業はそうはないでしょう。
私自身の手書きの履歴書、エントリーシートのムダ論については「」の記事をご覧いただきたいと思います。ただ、企業側が仮に就活生の熱意や誠意を履歴書やエントリーシートでわざわざ求めているなら、いざというときには企業もそれをすべきでしょう。その「いざというとき」というのはいつか?というと、内定通知を送るときです。内定者を決めて、内定通知を当然企業は送ります。そして、せっかく内定を出した学生には漏れなく入社してほしいと思っているはず。1人でも辞退されると、計算が狂ってまた採用活動を継続しないといけないとか、時期を改めて実施しないといけないとか、後は人事担当者である自分の立場が悪くなるとか、そういう弊害を避けるために、1人残らず内定を出した学生には入社してほしいと思っているでしょう。
この時点では、立場が逆転し、内定を貰った学生は、複数内定を得ていれば、その中から選べる立場であり、企業側は絶対にうちに入社してほしいという、選ばれる立場です。つまり、内定が出た後は就職活動中の学生と企業の立場から、完全に逆転して学生の方が上にきます。選べる立場なのです。内定を貰った企業に入社するか?しないか?内定者の一身専属権なのです。じゃあ、話は簡単ですね。企業がどうしても内定者に自社に入社してほしいならば、内定通知書も手書きにして誠意を見せたり、熱意を込めて送るべきでしょう。実際に手書きの履歴書、エントリーシートを社内で礼賛しているような企業ほど、姿勢を一貫させるためにも、自社が内定者に熱意や誠意を見せて、絶対に自分を選んでほしい。と思ったときには内定通知書は印刷ではなく、手書きで1枚1枚書いていくべきでしょう。私はこういう風潮がもっと生まれていくべきかな?と思います。企業の姿勢ははっきり言って矛盾しているんです。
手書きが非効率性は無視して、どんなときでも熱意や誠意が伝わる。というのならば、営業のときに使用する資料やパンフレットなども当然手書きにすべき。営業先の企業だって、自社を含めていろいろな企業から選べる立場の場合もあるはず。そういうときに熱意や誠意を見せるために、そういったものを手書きで作って持っていくことは必要じゃないんですかね?その方が自社と契約してくれる可能性も上がるのではないでしょうか?とはいっても、そんなことをしているところはどこにもない。と思います。手書きのものを受け取った側の企業も、何で手書きなの?って思うでしょう。その反応は学生も同じだと思うんです。何で手書きなんだよ?パソコンで印刷させろ!と思っていると思います。にもかかわらず、手書きを強要する企業としては、それなりのメリットを見出しているのでしょう。私に言わせれば、そのメリットはほとんど勘違いなんじゃないか?と思わざるを得ませんけど。
つまり、履歴書やエントリーシートで熱意や誠意を見せないと、落とされる原因になるというのなら、内定通知書も手書きじゃないと蹴られる風潮があっても良いような気がします。内定辞退をする際には当然理由を聞かれると思いますし、その度に説明するのが面倒だったり、何て言えば良いのか?分かりづらいかもしれません。そういうときに1つの選択肢としては、「内定通知書が手書きなので、御社の熱意が感じられませんでした」と述べて、辞退するのも良いんじゃないか?と思います。内定辞退をするときくらいでしか、学生は企業より上に立てないので、私は履歴書やエントリーシートの手書き礼賛の風潮を戒めるというか、淘汰していくためには、こういう試みも良いのではないか?と思います。内定通知書を手書きで書くか、履歴書やエントリーシートの手書きをいい加減やめるか、企業はどちらかを選べということです。

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