日本の就職活動はいわゆる新卒一括採用と呼ばれるもので、欧米と比べると閉鎖的な採用方方がとられています。この新卒一括採用は主に就職活動をする側の立場から批判に晒されることもあります。ただ、私がネットでたまたま見つけた記述の中に「新卒一括採用があるから、企業は技術も経験もない未熟な学生が採用されている」というものがあり、これは就職活動をする側の人間にとってのメリットだと言いたいのかもしれません。しかし、ここで言われていることが本当にそうでしょうか?確かに新卒の学生は中途採用される人たちと比べると、就業経験がない、または乏しいので、経験やスキルといったところでは一般的に見れば劣ると思います。しかし、それだけで新卒が中途採用に比べて劣ると判断して良いのでしょうか?前にも似たようなことを話しましたが、ある1つの基準だけを持ち出して、優劣を判断してしまうのは、ちょっとあまり賢いやり方には思えません。
というのも、じゃあ企業が新卒をわざわざ採用しているのは、単なるお情けでやっているのか?そんなはずはないでしょう。新卒を雇うことに対するメリットを感じているからこそ新卒を採用してる。その方法として、企業の考える1番合理的なやり方が一括採用になるのでは?と思います。実際新卒が経験者よりも勝っている部分はあると思います。年齢が若い、忠誠心を育みやすい、より適切な人材を選びやすい、といったものがあると思います。特に3番目が重要だと思うんですよ。中途採用だけしていれば良いといっても、中途採用の市場がそもそもそこまで大きくないというか、新卒と比べると、間違いなく自分の企業に応募してくる人の数が足りなくなるはずです。例えば、新規採用を10人予定していたとするなら、新卒なら100人くらいはくるかもしれない。でも、中途採用なら転職希望者しか対象にしかならないわけですから、10人採用予定なのに20人しかこないとかね。選べる人数が多ければ多いほど、自分の企業に見合った人材を発掘できる可能性は高まると思います。
新卒は一括で採用しているため、多くの企業は日程的に被ることもよくあり、複数の企業を同時に受けるのはきついです。しかし、それでも1企業あたりかなりの応募者がくるところも多くあります。しかし、転職の場合は基本的に随時採用となっているかと思います。要するに、各企業ごとに受けたいときに受けられる状況がありながら、1企業あたり応募してくる人の数は新卒と比べても少ないとなると、やっぱり中途採用だけで採用予定者を賄うこと自体が難しいですし、応募者、つまり企業が選べる人間の数が少ないほど、あまり人事担当者が望んでいない人も採用しないといけない状況が来てしまうと思います。
そのように考えると転職希望者だけ、中途採用者だけの採用を行っていれば企業にとって望ましい採用が常にできているか?というと違うと思います。中途採用は前職での仕事を長く続けてきたこともあり、それが逆に弊害になることもあるんじゃないか?と思います。前職での仕事で身についた癖が抜けないとか。それが新卒のまっさらな学生なら、何にも染まっていない可能性が高いので、これから企業の都合の良いように染めやすいという面もあると思いますし。正社員の経験がないことから、ある程度好きなように教育できてしまうのです。あと、仮に中途採用でしか新規採用を行わなかったら、転職希望者は引く手あまたでしょう。企業が新規採用する際は、常に転職希望者から行われるなら、先ほどした話と似ていますが、どちらかというと、採用される側の方がおそらく立場的に強くなる可能性が高いと思います。それは採用予定者数を確実に満たせる保証がないからです。企業はどれにしようかな・・・?って、選べる余地がほとんどないからです。
そもそも、採用予定者数を上回る転職希望者が集まるか?どうかすら分かりません。そうなると、企業側は今みたいに選べないですね。充足数を満たすために、ほぼ誰でも採用しないと企業が回らない状態がくるかもしれない。それを避けるために、企業にとって少しでも希望を満たせるような採用をするためには、圧倒的多数の採用希望者が集まらないといけない、そこで新卒の学生にまで対象を広げていると見るのが正しいような気もしないでもないです。まあ、本当に新規採用を転職希望者だけに絞ったら、今以上に転職が活発になって、私が描いたような状況にはならないかもしれない。転職希望者が今以上に膨大になって、企業からしてみれば選べるほど応募が集まってくるかもしれません。ただ、その分転職のために退職する人も増えるため、余計に採らないといけない人数も増えるので、どうなるか?分かりませんけどね。結局、新卒の学生を採らないといけない事情があって、新卒の学生まで門戸が開かれているのだと思います。

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