世の中のニートの割合はどんどん増えていっている模様です。ニートの定義は34歳までのため、それよりも年齢が上の人で実質ニートの人もいるわけで、報道されている数よりも確実にニートの人数、割合は多いはずです。こうしたニートの人たちに対する世間の反応はかなる冷たいです。扱いとしては生活保護受給者に対するものと同じような感じで、「ダメ人間」の烙印を押されたかのような罵倒をするような人もいます。ニートの人はそもそもどうしてこのような冷たい扱いを受けるのでしょうか?
・大人になれば「働くのが当たり前」という風潮があるから
大人になれば、大学を卒業すると多くの人は就職して社会人になります。つまり圧倒的多数がサラリーマンとして働いている。またはフリーターとして働いているという現状があります。要するに社会の少数派(イレギュラー)ははじかれる、大人になって仕事をしない、働かない奴はおかしいという穿った見方があるのでしょう。大多数が働いているから、働かないといけない。という風潮はどう考えてもおかしい。あなたたちは別に働くことを強制されているわけではなく、好きで働くことを選択しているだけでしょうから。だからニートの人たちも好きでニートをやっている。だから一緒なんです。
中には憲法の「勤労の義務」を根拠にして、ニートは憲法違反という人もいますが、これは多分おかしな考え方だと思います。そういうことを言う人は、「憲法は何のためにあるんですか?」という質問に間違いなく答えられない気がします。憲法の存在意義を知っていれば、ニートは憲法違反と論ずるのは極めて困難だからです。憲法は国の自由な権力の発動を制限するものです。憲法が規制するのは国家であり、国民ではない。だから、憲法を根拠に国民が何らかの義務を負うことはないのです。だから、別に働かない人は憲法違反ではないと解するのが妥当だと思います。
・親に寄生して楽をしていると思われている(特に社畜の人たちに)
今でも「親の脛をかじって・・・」なんてことを言う人がいるのかどうか分かりませんが、これの何が問題なのでしょうか?私は結局は家庭の問題だと思うので、親が寄生するのを許しているなら、別に良いと思います。「そんな甘やかしていると、いつまで経っても自立できない!」という反論がきそうですが、どうして自立しないといけないんでしょう?自立している人が多いから自立しないといけない風潮があるだけで、別に自立しなくて生きていける環境があるなら、無理に自立する必要はないでしょう。多くの人は親に養ってもらおうと思えば養ってもらえるのに、それでも働いている。私からしてみれば、こちらの方が逆に謎です。大学を卒業したら、就職して、親から自立して自分でお金を稼がないといけないという風潮、親にいつまで経っても寄生する人はダメ人間という扱いこそ、凄いおかしいと思います。
あと、ニートと呼ばれている人でも、案外何らかの手段で収入を得ている人は多い。厳密にいえば、そういう人たちはニートじゃないのかもしれませんが、自称ニートの人たちは、選べる手段の中で、1番都合の良い生き方(実家に住み続けて、お小遣いくらいは自分で稼いで暮らす)をしているというだけでしょう。どういう人生を歩むか?は人の自由です。親に寄生している=楽して生きているという印象があるのか?それを快く思わない人がいるのは事実だと思います。特に毎日苦労して働いている社畜の人とかはね。はっきり言って、こういう問題は余計なお世話でしかない。他人が口出すような問題では、本来はないはずです。
・ニートは社会に迷惑をかけている
これは例えば、ニートは働かないから税収が減るとか、そういうことでしょう。ただ、これは批判の矛先がおかしい。そもそも、働かない人は別にニートだけじゃない。専業主婦の人たちだってそう。ニートだけが悪者にされるのはおかしい。また、ニートが働かないと別に別に税収は減りません。現状維持でしょう。そして、こういう問題でそもそもおかしいのは、今回の例でいえば、税収が増えない原因をニートに押し付けているということ。ニートでいるのは犯罪ですか?違いますね。ニートは合法の中で存在しているのです。じゃあ、ニートの存在は国が認めていることになります。国がニートを許しているのなら、税収が下がる原因はニート自身ではなく、ニートの存在を認めている国にあるはずです。だって、街でタバコを吸っていて、見知らぬ人に「おい!タバコ吸うんじゃねーよ!」って言われても、「は?」って感じでしょう。そういう文句はタバコを合法化している国に言ってくれよ。というのが本来の文句の言い方であるはずです。
国はニートをできるだけ減らそうとしていますが、それは憲法上、ニートを強制的に働かせることはできないから。というか、時代が変われば、社会成層の構成も変わるのが普通なんです。昔と違って、いろいろな職業の人たちがいる。働かない人も増えている。それは彼らの自由な生き方がもたらしたゆえの結果です。その自由な生き方を認めているのが国です。つまり、ニートが増えることによって、仮に税収が下がるなどの問題が起きたとしても、それは日々刻々と変化する社会に合致するような、国のあり方が模索できていないということになります。いつまで経っても昔ながらの制度を維持していて、それで問題なく国が回ると考えている方がちゃんちゃらおかしい。年金制度なんてまさにそうでしょう。何十年か後にはおそらく崩壊しているんじゃないか?と思います。年金制度を創設した当初は、そんな未来は想像していないでしょうから、これも社会が変化してきていることによるものです。
だからこそ、ニートが増えてきた今、国がすべきことはニートを減らすというよりは、ニートが増えてきた今の社会状況に合致した制度等を整えること。そういう訓練を今からしていかないと、さらに社会が変化したときに、あたふたして何もできずに、国が崩壊していくのをただ見ていくだけになります。例えば、少子化対策として、女性に子供を産め!なんて叫んでも効果ないわけですよ。女性が子供を産みたくなるような社会を作っていくことの方がよっぽど建設的だと思いますし、長期的に見ても効果の期待できる策でしょう。現状では、過労死とかも増えてきているし、一部の業界では離職率も高くなっている。こんな状況でニートに対して「働け!」と平気で言える人の神経を疑うし、こんな状況で誰が働きたいと思えるの?
社会全体がニートになることを後押ししているような状況で、ニートを叩いても何の意味もない。国のニート対策としては、先ほど少子化対策の例と同じで、ただ就労支援をするのではなく、ニートが安心して、健全に働いていける労働環境を構築するのが先でしょう。ブラックな職場に一定の確率でぶち当たるかもしれない現状で、誰が働きたいと思えるんですか?ニートが働いても良いと思えるまともな労働環境を作るのがどう考えても先です。ブラック企業を排除してから、違法労働を根絶してから。そういう努力をしないで、求人を紹介して、ただ働け!と言うのはあまりにも身勝手すぎるのです。また、働く必要性のないニートが働くと、本当に働かないといけない人、働かないと生活資金を得られない人などが困りますね。それだけ職に就きづらくなるのですから。また、働く気がない人たちを無理矢理働かせたとして、彼らが一生懸命働くとは思えないし、それは雇う会社にも多大な迷惑になる可能性がある。だから、働く必要のないニートは働かない方が社会にとってもプラスだと思いますよ。

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