生活保護を「甘え」という人がいます。どれだけいるのだろうか?という感じではありますが。ご存知のとおり、生活保護は全員が貰えないから、そういう風に貰えない人たちからは、もらえる人をあまり好ましく思いません。「甘え」というもっともらしい言葉を使っているが、これこそが日本の生活保護制度のスティグマを生んでしまっているのです。そもそも甘えたらいけない理由はないので、生活保護の受給者を甘えを認識するのは自由でしょう。甘えなのか?甘えじゃないのか?の答えはないのですから。しかし、生活保護は受給資格があれば利用しても良い制度ですから、生活保護が甘えだとしても、生活保護に甘えて良いということになってしまいます。日本では甘え=よくないことみたいなことが言われているが、そうなると、同じセーフティネットを利用する人間は全員甘えになります。例えば、救急車を利用する人も甘えでしょう。救急車を1回呼ぶと3万円から4万円くらいかかるらしいですね。これも税金ですね。そう考えると、生活保護が甘えならば救急車の利用者も甘えなので、仮に甘えがいけないことならば、救急車なんか呼ばずに自力で病院に行けということになってしまいます。
生活保護を受給できる権利は自体は国民が平等に持っているはずです。救急車の利用も同様です。受給資格や利用するシーンがある人が限られているだけです。生活保護に関していうと、海外では、生活保護の受給資格を持っている人に対して、自治体が積極的に受給を勧めるシーンすらあるようですが、日本では全く真逆で、むしろ勇気を振り絞って申請にしてきた人に対して追い返そうとしているシーンすらあります。はっきり言って国や自治体がすることとしてありえない光景です。それだけ国を挙げて、生活保護受給者を排除しようとする姿勢が見られるということです。国が国民を守るって意識は残念ながらこの国ではあまり見られないようです。
例えば、ブロガーのイケダハヤト氏は、以前、自らのブログのエントリーでブラック企業で働いていて、悩み続けて、精神的にも肉体的にも病んでしまっている人は、もう会社辞めて生活保護に頼るべき」という記事を書いたところ、それにTwitter上で、「そうやって甘えを許すのはどうなのか?」といった反論がきていました。ここでまず1つ疑問なのは、先ほども言いましたが、生活保護は甘えなんでしょうか?仮に甘えだとして、この書き方から察するに、甘えるのはよくないだろうというニュアンスに聞こえます。じゃあ、甘えるのはよくないのでしょうか?甘えるのがよくないとなれば、先ほどと同様に税金で運営されているセーフティネットはできる限り使うべきじゃないので、救急車の利用でもできれば遠慮してもらいたいです。
生活保護に頼るのが甘えだとして、甘えるのはよくないというのなら、生活保護に頼ること自体がよくないということになります。ブラック企業は違法労働を課しているところが多いと思いますが、そういう違法な労働を強いられる謂れはありませんから、普通に考えたら即座に辞めて新たにホワイト企業を探すというのは当たり前の行動でしょう。しかし、この時代にすぐに再就職先が見つかるわけはないので、中には求職活動をするために、お金が必要な人も出てくる。その期間が長期に渡ったりすると、貯金も底をついてきます。収入がなくて、貯金も底をつきそうだというケースでは、そんな人は生活保護の受給資格を持っている人が多いでしょう。そういうブラック企業から逃れてきた労働者のうち、一部は受給資格を持つ人間だと思いますが、その受給資格を持っている人が生活保護を申請してはいけないとなれば、じゃあ誰が申請できるのでしょうか?受給資格があると思われる人間が受給してはいけないとなってしまうと、生活保護は制度だけが存在していて、実質誰でも利用できない制度になってしまいます。
ブラック企業で働き続ける人は、はっきり言って先が見えない。そして、いつ自分が壊れるか?も分からない。そういう人が生活保護に頼るべきじゃないというのなら、それを認識しながら、辞められない、辞めるべきじゃないというのなら、その人はその状況から一生抜けられないでしょう。本来は誰もが健全な労働環境のもとで、仕事をするべきだと思いますが、国の法整備が追いついていないか?監視が甘いのか?そういう状況は生まれていません。客観的に見て酷い労働環境で働く人が生活保護に頼るのは、健全な仕事を得るため、健全な生き方を探すためのリスタートに必要なツールです。この状況で生活保護を利用してはいけないと言われると、では、誰が利用して良いのか?というのが全く分からなくなります。こういう風潮が生活保護に対するスティグマを生み、皇族の人間が利用しづらい状況を生んでいるのです。それに対する批判は筋違いだと思います。甘えと思うのは結構だが、受給資格がある人間が受給するのは客観的に見て悪いとは言えないでしょう。客観的に見て落ち度はないので、こういうケースまで否定されると、自分が甘えだと感じたものは何でも否定し放題となってしまい、さっきと同様に救急車も甘えだから利用すべきじゃないよね。ということも言えてしまいます。
生活保護に対する甘えという言葉は、生活保護に対するスティグマを間違いなく生むと思うので、現状の生活保護制度の機能不全、受給資格があるものの受給を相当程度阻んでいる状況を生んでしまっているのです。そうなれば、もはや適切な制度運営はできないどころか、国や自治体はその状況に漬け込んで、しめしめと思い生活保護の運営に関わる費用の削減をしようとしている状況は、なんとなく窺えます。どうしてもこの国では生活保護に対する風当たりが強い、生活保護などの恩給制度に頼る人を甘えと捉え、それはすべきじゃないと考えている人間も多いと思います。でも、そういう人は生活保護には頼らないかもしれないが、結局国民から集めた税金の恩恵は受けていると思いますし、いずれ救急車の利用をするかもしれないですよね。救急車の利用を今後一切しないとか、病院に行っても医療保険は利用しない(医療保険制度の財源も税金)で全額負担をするとか、そういう姿勢ならば良いかもしれませんけど、生活保護だけを甘えと言うのはおかしいのではないか?と思いますよ。

失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで
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